日々霜

本とかゲームとか雑記とか小説とか。好き勝手。

私がここに住んでいる理由

不順による体調不良で脳と腹んなかでリンボーダンス状態の中、一通の手紙が届いたのでなんとなく、私が今独り暮らしをしている部屋について書く。

私は去年の中旬から一人暮らしをしている。

元々姉たちと住んでいて、前借りていた一軒家が取り壊されるのをきっかけに、独り立ちを決意。

不動産屋での部屋探しも勿論生まれて初めてで、四苦八苦しながら不動産屋を駆け回る。

姉たちにアドバイスをもらいつつも、部屋探しって楽しいは楽しいけどめっっっちゃ疲れる。

条件で探してもらって、内見、全条件揃ってはいここに決定!なんてそんな甘くなく、ここはこれがないけどあれがある、ここはあれがないけどこれがある、あれもこれもあるけど家賃がはい高ーい、もしくは駅からめっちゃとおいーーみたいな、惜し物件が多発して、だんだん心も折れてくる。部屋探しではやっぱり譲れない条件というのをちゃんときっちり決めていかないと駄目なのだと思うけど、私の場合なんだか諦め悪く、そこまで理想も高くないしーと甘い考えでいたらマジで全然良い部屋がない。

そして当たり前ながら働きながらの部屋探し。もうジョーばりに真っ白になりかけていたある金曜日。

姉とよく話していたのは、大きいチェーンの不動産屋さんは皆持っているデータベース自体は同じだから、寧ろ小さい、その街馴染みの不動産屋さんの方が隠し玉を持っているであろうという噂。

それを思い出し、次の日も内見入れてたりしたから金曜くらいは休もうかと思って居たんだけど、重い足を持って、住みたい街に繰り出した。

といってももう夜も遅く、街馴染みの不動産屋さんは軒並みしまっている。あー、やっぱり無駄足だったか、と思いとぼとぼ歩いていたら一件、謎の店を発見。

不動産屋、らしい。ガラスの上部に紙が貼られていて、中の様子が足元しか見えないようになっている。名前も怪しい(ちょっとダサい)。

しかし入らないことにはどうにもならないし、同時にその怪しさになんとなく惹かれたのもあった。

ガラっと入ると、妙齢の女性。Iさんという。黒髪眼鏡で地味な見た目だが、かなり高いトーンの声。

私、これこれこういう部屋ありませんかと、常套句を告げる。

Iさん、顔を顰め、なかなかないわよ難しいわよ~と言いながら物件情報を探り始める。

その時点で、あんまり期待できないな……と思ったらなんとそんなことはなく。幾つか私が今まで見てきたちょっと条件より家賃オーバーな物件情報を幾つか出しつつも、「あ、でもここなら結構仲の良い大家さんだから、あたしが言えば家賃条件内まで下げれるわよ」とかさらっと言いだす。おいおい神がここにいたよ、と最早安心しだしたしもだであった。しかし。

I「ねえ……あなた生年月日は?」

急に聞かれて、戸惑いつつも答える。するとIさん、メモを取り始めると同時にぶつぶつ話し始め、よくわからない透明の円定規みたいなものを取り出す。

I「実はあたしこういうのやっててね」どういうのだよ。と言いそうになったんだけど、よくよく聞くとつまり六星占術をやっていると。不動産屋であると同時に占い師なんだって。

そして、頼んでもいないのに私の星と方角を占い出したのでした。まあいいやほっとこう、と思ったらあれ、だんだん曇る表情。そして言い放つ。

I「あなた、駄目よ」

しもだ「はい?」

I「このへん(私の希望地)に住んだら不幸になるわ」

しもだ「はい????」

そして、さっきまでいい感じに出してた物件情報を全部しまいはじめる。えええ、と止めようとするも、だめよだめよ、とやめてくれない。神かと思ったら思わせぶりの悪魔か。私混乱。

詳しく聞くとどうやら、私が住んでいる場所(前の家)から見て、今から住もうとしている地域、が真北にあたると。

I「北ってのは犯罪者の行くところよ!」

何言ってんだこのババア。と言いはしなかったけど間違いなく思った。

そもそも、私職場がこっちなんですけど。と言ったら、さらに慌てだす。じゃあすでにあなたは毎日北に通っているってこと? まずい、まずいわ、転換しないと! と。

そのへんで私もう結構力尽きていた。なんてったって自分がそれまで時間かけて探してきていた地域自体を全否定され、家が決まるどころか、探すやる気すらソガレテイル。

しもだ「この辺自体が駄目って、もう……私、明日もこの辺で一つ、内見入れてるんですよ。」

I「……それはどこ?」

そこで、次の日内見予定の物件情報を見せる。それはその日ネットで見つけて、とりあえず、と即次の日見ることになった物件だった。

それを見て、

I「あ、あたしこの物件知ってるわ」

しもだ「そうなんですか(ナゲヤリ)」

I「うん。えーっと(地図を見る)たしかこのへんよ。……え、待って」

しもだ「?」

I「ここよ」

しもだ「??」

I「あなたここにしなさい。見て。ここなら、ぎりぎり北じゃないわ!」

NIK(何いってんだこのババア)はさらにでかかったんだけど言われた通り見てみたら、確かに、きれーいに北からちょっとだけ外れている。しかしそれでいて私の希望地域で、まだ見には行っていないけどどうやら条件もなかなか。さらに、後押しとして、Iさん的に私が見に行こうとしている物件には別部屋があり、そこも空いていると。そしてそこは、私の条件より家賃が2000円オーバーするんだけど、明らかに私が見に行こうとしている部屋よりいいと。そこで、

I「ここの不動産屋さんも知り合いだから、私の名前だして!そんで2000円下げてってお願いすればいいのよ!」

もう急展開過ぎてよくわかんなかったんだけど、疲れと空腹と心折と希望、に一気に襲われ、もうなんだか、

多分私この部屋に住むんだろうな、とその時点で思い出していました。

結果次の日、不動産屋さんにお会いし、即座にIさんの話して2000円さげてーなとお願いし、結果その通りになり、今に至ります。

部屋自体の契約を交わした不動産屋さんも、夫婦で営んでおり、非常にほのぼのした良い人たちで、家を決めたその日、「お昼時ですから」とおすすめのランチ情報をわざわざ印刷して渡してくれたりした。

ということで二つの不動産屋さんにお世話になり、今に至ります。

運気やらなんやら上がった下がったはしらねえですけど、とりあえず、今の部屋はなかなか愛着があります。

Iさんには家決定後もお礼を言いに一度会いにいき、ひたすら人生観とかについても占ってもらったり、男の子紹介してあげるわよ的なお話もしてきたりしました。

それ以来会ってなかったんだけど、今日、ポストを見たらIさんから手紙が届いており、開いてみると「その後どうですか? 近況が聞きたいのでそろそろいらっしゃいよ^^」的な内容で、この日記を書くに至りました。

また遊びに行って来ようと思います。ああ、変な縁。